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岡潔という男

はじめに

ひょんなことから岡潔という人物について知ることとなった。
きっかけはEVISBEATSという個人的に好きなアーティストが数ヶ月前にリリースしたアルバムタイトルが「岡潔(Oka Kiyoshi)」という明らかな個人名であったため、なんとなく興味を持ちGoogle検索したことがきっかけである。
アルバム: 岡潔(Oka Kiyoshi)(Spotify)

岡潔 is 誰?

岡潔を検索すると以下のような内容が返ってきた。

岡潔(おか きよし、1901-1978)は、昭和期に活躍した日本の世界的数学者です。多変数解析函数論(特に多変数複素函数論)において、世界中の数学者が挫折した3つの大難問を、約20年をかけて独力で解決し、1960年に文化勲章を受章しました。 主な特徴と業績:

  • 多変数関数論の開拓者: 専門的な研究領域で「上空移行の原理」などを発見し、未解決だった難問を一人で解き明かしました。
  • 情緒と創造: 数学を「生命の燃焼」と表現し、教育や文化において「日本的情緒(情緒、情操)」の重要性を説きました。
  • 著書『春宵十話』: 数学のみならず、人間愛や教育について語った随筆がベストセラーとなり、多くの人に親しまれました。
  • 人物: 奈良女子大学名誉教授。数学に没頭するあまり風変わりなエピソードも残る、孤高の天才として知られています。

その功績は現代でも高く評価されており、数学者としてだけでなく、独自の視点を持つ哲学者・思想家としても語り継がれています.

※ Google検索: AIによる要約より

私は、優秀な数学者かつ哲学者であり思想家という肩書を見て俄然興味を抱いた。

ちょうど最近暇と退屈の倫理学(著: 國分 功一郎)を読んでいたことから哲学にハマりつつあったことや、統計・微積を以前から継続的に学んでおり岡潔との共通点があるような気がしたことから、もう少しその思想や哲学について調べてみることにした。

岡潔の思想

岡潔をYouTubeで調べると、彼の思想をまとめた多くの動画が散見される。 私はその中でも、以下の動画を確認した。
【岡潔】成果を出す人は効率を無視している(YouTube)

視聴した動画の内容についてざっくり以下にまとめる。

動画の全体像:効率の罠と直感の力

効率を追い求め、時間や無駄を削って多くを処理しようとすると、本当に大事な判断や「どの道を選ぶか」という直感から遠ざかってしまう。真の成果とは、決められた道を他人より早く走ることではなく、本質的な理解と直感から生まれるものである。

直感と理解を深める「7つの教え」

動画では、直感を働かせ、深い理解に到達するための前提条件として以下の7つが挙げられている。

  • 第1の教え:速さより「何を見るか」を優先する
    • 作業を早くこなす段取りを工夫する前に、「そもそも何をする必要があるのか」を見極めることが重要である。
    • 意図的に一度立ち止まり、視線の置き場所を決めることで、結果的に迷いが減り理解が加速する。
  • 第2の教え:直感は急がず、条件だけ整える
    • ひらめきは力ずくで生み出せるものではない。焦りや複数の不安で心がざわついている状態では、直感は働きにくくなる。
    • 判断に迷った時は、条件を増やさず「自分の理解が一番進みそうなものはどれか」という一点に絞ることで、環境が整う。
  • 第3の教え:同時に抱える数を減らす
    • 複数のタスクを並行して同時に進めようとすると、一つ一つの理解が浅く、輪郭がぼやけてしまう。
    • その日、心の中心に置く問題を「1つ」に絞ることで、問題に対する熱量が増し、深い変化が起きやすくなる。
  • 第4の教え:すぐの成果で判断しない
    • 学びや成長の初期段階では、目に見える成果がすぐには出ない。ここで短期的な指標や効率だけで判断すると、最大の成長の機会を切り捨ててしまう。
    • 目に見える成果ではなく、「問いの形が昨日とどう変わったか」という自分の中での変化だけを基準にすることが大切である。
  • 第5の教え:空白の時間が理解を結びつける
    • 隙間時間に常に新しい情報を詰め込もうとすると、知識が断片的なままになってしまう。
    • 集中して考えた後に、あえて意図的に思考を手放す「空白の時間」を作ることで、無意識下で理解の欠片同士が結びつき直す。
  • 第6の教え:他人の効率感と距離を取る
    • 他人の処理スピードを見て自分を判断してはならない。他人の効率の物差しは、自分には当てはまらない。
    • 外側から見たスピード競争と、自分の内側で進んでいる「理解の質」は別物として切り離して考える必要がある。
  • 第7の教え:静かな「好き」が道を決める
    • 「役に立つか」「評価されるか」といった損得の基準で選んだものは、集中力が長続きせず消耗してしまう。
    • 「自分が長く付き合えそうか」「どうなっているのか知りたい」と静かに心惹かれる対象を選ぶことが、結果的に一番遠回りの少ない道になる。

結論

この動画は効率そのものを完全に否定しているわけではない。「どの道を進むか」を決める段階では直感を信じ、選んだ道を「どう歩くか」の段階で効率を使えばよいと語られている。
1日の終わりに「今日は自分の理解が一段深まったか?」と問いかける習慣をつけることで、自然と理解が深まる方向へと人生が向き直っていくと締めくくられている。

内容について大変共感するところが多く、いくつかの気づきがあったので書き記していきたい。

1. 「早く終わらせること」が目的になっていないか

企業で働いていると、いつの間にか「早く処理すること」自体が目的になってしまうことは確かにある。 メール、会議、資料作成、依頼対応など、日々の仕事では効率よく進める力が求められる。しかし本来は、その前に「そもそも何を見るべきか」「本当に考えるべき問いは何か」を見極めることの方が重要なのだと思う。

毎日出社と同時に自身のタスクを整理して消化していくことになるが、常に目的を意識し「やるべきこと」を考える必要がある。目的はタスクを消化することではなく、企業がよりよくなるための価値を提供することだ。

タスク消化時も資料を早く作ることより、その資料で何を伝えるべきかを考えること。データを早く集計することより、どの数字を見るべきかを見極めること。

こうした視点がないまま効率化しても、結局は本質から遠ざかってしまう。効率は大事だが、使う順番を間違えてはいけない

2. 同時に抱えすぎると、理解は浅くなる

仕事では複数のタスクを並行して進めることが当たり前になりがちだ。ただ、頭の中まで常にマルチタスクになってしまうと、一つひとつへの理解が浅くなる。 本当に大事な問題ほど、「今日はこれを考える」と心の中心に置くものを一つ決める必要があるのだと思う。

ただ、コーディングエージェントが台頭してきている現代においては、複数のエージェントを走らせマルチタスクによるタスク消化を可能とする側面もあるため、一概には言えないのが悩ましい。 作業はAIにやらせ、人間は組織における抽象的な課題を実装レベルに落とし込むことに時間を使うことが求められる。

AIオーケストレーションと人間がやるべきIssue定義(アジェンダセッティング)を効率よく行き来するバランスが求められている気がする。

3. すぐに成果が出ない時間も、前進している

仕事では成果物や数字で判断される場面が多い。だからこそ、自分自身も「すぐ形になったか」「すぐ役に立ったか」で学びや挑戦を評価してしまいがちだ。 しかし、理解が深まる過程はもっと静かで、目に見えにくいものだと思う。昨日より問いが少し具体的になった。違和感の正体が少し見えた。知識同士が少しつながった。そうした変化も、確かな前進なのだと思う。

これからの時代、特に開発領域においてはコーディングのハードルが下がる中で、より重要になってくるのは課題設計・ドキュメンテーション・コミュニケーションといったビジネススキルや、ソフト・ハード・DB・ネットワーク・セキュリティといった領域での高度な専門性だ。 これらのスキルは学習してもすぐに身につかず実践を交えつつ醸成していくものであるため、習慣化した継続的な学習と経験がより重要になってくるはずだ。

4. 空白の時間も、理解には必要である

隙間時間まで情報収集や作業で埋めようとすると、知識は断片的なままになってしまう。 一度考えたことを手放す時間があるからこそ、頭の中で理解がつながり直す。何もしていないように見える時間にも、思考は静かに進んでいるのかもしれない。

これは以前から個人的に実践していたため、改めて間違っていないことの確認となった。 アイデア創造における名著アイデアの作り方(著: ジェームス W.ヤング)にも同様の記載がある。

5. 効率は、道を選ぶためではなく、選んだ道を進むためのもの

この内容を通じて一番大事だと感じたのは、効率を否定するのではなく、効率を使う順番を間違えないことだった。

まずは、自分が何を見るのか、どの問いに向き合うのかを決める。その段階では、直感や違和感、静かな興味を大切にする。 そして、進む方向が決まった後で、効率よく行動すればいい。

これからは、1日の終わりに「今日はどれだけ処理できたか」だけでなく、「今日は自分の理解が少しでも深まったか」と問いかける時間を持ちたい。

まとめ

以上、岡潔についてどんな人でどんな思想を持っているか知ることができた。

岡潔は、単に偉大な数学者というだけではなく、「理解するとはどういうことか」「人はどのようにものを考えるべきか」という問いに向き合い続けた人物なのだと思う。 その思想には、学問に精進する人だけでなく、日々仕事に向き合うビジネスパーソンにとっても多くの示唆がある。

現代は、AIやツールの発展によって、作業そのものはますます速く処理できるようになっている。だからこそ、人間には、目の前のタスクをこなすだけではなく、問いを立てる力、違和感を拾う力、そして深く理解しようとする姿勢がより求められているのだと思う。

効率よく走ることだけが成果ではない。 どこへ向かうのかを自分の感覚で見定め、静かに、しかし確かに理解を深めていくこと。 岡潔の思想には、そんな時代を超えた働き方のヒントがあるように感じた。